今回の手術内容等々

 気胸という病気に関して感じるところを、とめどなく綴っていこうと思います。今後診療を受ける必要が生じた方の一助になればと。

 まず、気胸という病気は、事前に医師に相談しにくい病気であることと、気胸が発症した時の緊急性により好むと好まざるに関わらず主治医を決めてしまう現実があると思うのですよね。多分こういう側面は、気胸の呼吸器外科に限らず外科治療全般に同じ事が言えると思うのですが。
 気胸に関して言うと、最適なかかりつけの呼吸器外科医と如何にして巡り会うかというのは、簡単そうに見えてとても難しい問題です。
 語弊を恐れずに敢えて言えば、日産厚生会玉川病院へ行けるなら、それが恐らく最も容易にしてベストな解だと思います。私は通ったことがありませんが… (微妙に遠いので)

 気胸は少なくとも風邪のように「なんとなく調子が悪いなぁ、近いうちに病院行くか」といった感じで表れる病気じゃありません。基本的には発症したら入院して最低限胸腔ドレナージによる胸腔内空気の排出を行う必要がある病気です。また、たいていの場合は救急車を呼ぶなどの、救急搬送も伴うことでしょう。
 患ったのが軽い気胸で、経過観察もしくは胸腔ドレナージだけで済んだのであれば、それはもの凄くラッキーで今後の気胸との付き合い方を考える素晴らしいチャンスなんじゃないかなと思います。その後の治療をどの病院、医師と、どのような方法で行っていくか、確実に検討することができるのですから。
 気胸発症時に救急搬送されて、収容先で胸腔ドレナージしつつ入院というのはよくある話ですが、それ以上の処置(手術)を同じ病院で受けるかどうかの判断は、患者が利用できる判断材料が極めて乏しい状態であるが故に、とても不公平な取引であると常々感じるのですよね。救急搬送先が少なく、ましてや呼吸器外科を要する病院そのものが少ない地方都市であれば、そもそも搬送先を信じるしかないので不公平もへったくれもないのですが、こと都内においてはカオスです。数ある病院の中で急患受け入れ可能という条件が合致したためだけに、搬送先の病院が選ばれているのです。気胸に対する適切な治療が行えるかどうかは、別のお話です。そもそも搬送先の病院がどれだけの医療レベルを持っていて、どれだけ信頼たり得るかという判断材料は、この時点では得られていないのです。

 さて、今回の入院で行われた治療法は、胸腔ドレナージ、胸腔鏡下肺嚢胞切除術、胸膜癒着術の3点でした。
 胸腔鏡下肺嚢胞切除術は、いわゆる気胸の原因となっている肺の異常部位(ブラ)を部分切除する手術です。簡単にブラ切除と呼ぶことにしましょうか。そして胸膜癒着術は、人為的に肺と肺を囲む胸膜に炎症を発生させて癒着させる治療方法です。
 メインは胸腔鏡下肺嚢胞切除術となります。この腕の善し悪しに加え、切除時の予防保全としてカバーリング法がとられているか、これだけは最低限確認するべきです。カバーリング法というのは、生体内で吸収されるメッシュ状の繊維(これは病院によっていろいろ呼び名があるはず…)を切除部位に貼り付ける方法で、局部的な胸膜癒着術と呼ぶことも出来ます。
 手術内容の説明でカバーリング法に対する説明がない場合、もしくはカバーリング法を取らないと明言する場合、その医者の腕と医療に対する考え方に疑問を感じざるを得ない、というのを今回の入院によって痛感した次第です。今回の場合、ブラ切除後2日経っても咳き込んだときのリークが収まらず、結局胸膜癒着術を行うことになったのですが、ブラ切除時にカバーリング法も併用していたら、もしかすると癒着術までは不要だったんじゃないかと思う次第。正直、悔やんでも悔やみきれない思いで一杯なのですよ。

 胸膜癒着術は気胸に対して不確実な最終手段だと思っています。胸膜癒着術の発想は、応急パンク修理剤と同じ感じなのですよね。基本的に応急パンク修理剤を使ったタイヤやチューブは、その後まるごと交換する必要があります。が、人間の肺は交換できる訳がありません。健全であった部位への影響(今まで問題なかった部位が癒着することによる違和感、痛みの発生)や、その後併発する諸々(治療時の痛み、発熱、余分な癒着による再手術への影響等)を勘案すると、筋の良いやり方とは到底考えられません。
 そのため、今後胸腔鏡下肺嚢胞切除術を受けることになる方は、必ずカバーリング法を併用するか、医師に確認するべきです。併用しないというならば、その場は胸腔ドレナージだけで凌いで、後から適切な手術を行ってくれる病院を探して、そこで手術してもらった方がいいくらいだと思います。どうしても時間と費用はかかってしまうのですが、胸膜癒着術を受けずにいればやり直しは何度でも可能ですが、安易な胸膜癒着術の実施は後に看てくれる医者を減らすばかりか、部分切除が必要になった場合にそれを妨げかねません。
 胸腔鏡下手術は気胸のためだけにあるものではありません。将来別の病気で肺の一部切除が必要となった場合に切除できないなんて、冗談じゃないですよね。気胸はある意味放っておいても治る病気ですが、他の病気はそうじゃないかもしれません。緊急の場合は一部、あるいは全部切除もやらざるを得ないかもしれません。そのようなときのためにメンテナンス性を確保しておく必要は、プログラムや工業製品と同様に、人間の身体にも言えることです。むしろ人間の身体は容易に部品交換できるようなものではないので、尚更です。
 胸膜癒着術を受ける必要がなければ、それに越したことはありません。であるならば、胸膜癒着術を受けずに済むために、やれることはやっておくべきだと思うのですよね。

 今回の入院で胸膜癒着してしまった点についてはもはや諦めているのですが、左肺であったことがせめてもの救いです(人間の肺は、心臓の位置の関係から、両肺の大きさは均等ではなく、左右45:55くらいの割合で、右肺が大きくなっています。そのため右肺の方がまだ重要、と見做すことができると思います)。右肺については全力で守る決意です。つまりは右肺の気胸再発時には、この病院には頼らない可能性もあるということで。とはいえ肺気腫が進んでいたら、切除できないケースが多くなっちゃうしナァとか、いろいろ考えなきゃいけないはず。面倒くさいなぁもう、って感じで、多分今後もだらだらやっていくんだと思います。